子供の恐怖を作り出す仕組みとは?原因と克服方法
驚くほど多い「子供の恐怖症」、それを引き起こさないために
幽霊屋敷や恐ろしいキャラクターが登場する本、そして親がしつけの一環として使う「〇〇しないとお化けが出るよ」などの言葉、これらに本当に怖がってしまう子供がいます。
一度「幽霊が怖い」「暗闇が怖い」となってしまうと、後になって親が困ることもあるかもしれません。
子供が恐怖症にならないように、親が気をつけるべきことは何でしょうか?有名な心理学の実験を交えながら、そのポイントをお伝えします。
蜘蛛でも生きている蜘蛛の方が怖い
心理学の研究により、恐怖を感じやすいものとそうでないものがあることが分かっています。
例えば、蜘蛛。
空中を浮かぶ雲よりも、生きているクモが怖いと感じる人の方が多いですよね。
同じ箸でも、食事に使う箸よりも、川にかかる橋が不安になります。
子供も同じで、特に恐怖を感じやすいものがあります。
- ヘビや昆虫など、生物の存在 - 高い場所や暗闇といった環境 - 注射や血などの外傷 これらの3つのカテゴリーは、特に恐怖症を引き起こしやすいとされています。
さらに、これらに関連する、大きな音や幽霊のような存在も、子供に恐怖症を引き起こしやすいと言われています。
しかし、心理学の実験では、これらの恐怖が感じやすいもの以外でも、簡単に恐怖心を引き起こすことが証明されています。
子供の恐怖心はすぐに作り出される!
恐怖そのものは脳の反応です。
しかし、何を怖がるかは学習によって決まります。
つまり、その対象物がどのように入力されるかによって、恐怖はますます増えてしまう可能性があります。
心理学では、このプロセスを恐怖条件づけと呼んでいます。
ここで、どれほど簡単に恐怖症が形成されるかを、昔から知られている有名な心理学実験を用いてご紹介しましょう。
恐怖症の発生メカニズムを理解し、お子さんの怖がりを予防しましょう
アルバート君と白ネズミの心理学実験
約100年前、心理学者のワトソン博士は、生後11ヶ月のアルバート君を対象に、恐怖心を作り出す実験を行いました。
初めに、アルバート君に白ネズミを見せます。
この時点では、白いネズミはアルバート君にとっては怖いものではありません。
彼は手を伸ばしてネズミに触ろうとします。
しかし、アルバート君が触ろうとした瞬間、近くで大きな音が鳴ります。
その音に驚いたアルバート君は、少ししてから再び白ネズミに手を伸ばそうとします。
しかし、再び大きな音が鳴ります。
アルバート君はその音に怖がり、びっくりしてしまいます。
このプロセスを7回繰り返すと、アルバート君の頭に「白ネズミ=怖いもの」というアイデアが刷り込まれ、大きな音がなくても白ネズミを見ただけでも彼は怖がるようになりました。
恐怖症の増長は簡単で消去は難しい
この実験からも分かるように、恐怖心は情報のインプットによって生じるものです。
お化け屋敷やお化けや鬼が登場する映像や画像など、視覚的な刺激が多くの場合、恐怖心のトリガーとなります。
その子供にとってその情報がインパクトのあるものであれば、たった一度の経験でも怖がるようになります。
そして、一度怖がると、その恐怖心を消すのは非常に困難です。
逆に、恐怖心を増幅させるのは簡単です。
先述のアルバート君の実験でも、最初は白ネズミだけを怖がっていましたが、次第に白ネズミに似た白ウサギなども怖がるようになってしまいました! このように、ある刺激によって条件づけられた反応が、他の似たような刺激にも反応する現象を心理学では「般化」と呼んでいます。
恐怖心が自分の中で広がっていくのです。
いったん子供が怖がりになってしまった場合、克服は可能?
子供がすでに怖がりになってしまっている場合、その克服は可能でしょうか。
子供が暗闇を異常に怖がる様子を見ると、親としては心配になるかもしれません。
しかし、物の感じ方や捉え方は親子でも異なるものです。
子供が怖がりを克服するためには、以下のようなアプローチが有効です。
1. 心配することなくサポートする:子供が怖いと感じる場面や状況に遭遇した時、親としては安心させるようにサポートしましょう。
子供の気持ちを汲み取りながら、一緒に向き合い、話し合うことで、子供の恐怖心を和らげることができます。
2. 怖いものに挑戦する機会を提供する:子供には怖いものに直面する機会を与えることも重要です。
しかし、その挑戦は子供にとって負担にならないように注意しましょう。
例えば、少しずつ暗い場所に慣れるために、子供と一緒に暗闇の中で遊ぶ、または話をする時間を設けることが有効です。
3. ポジティブな例を見せる:子供にはポジティブな例をたくさん見せてあげましょう。
怖がらずにチャレンジしている子供や、成功した体験を持つ他の子供の話をすることで、子供自身が勇気を持つことができるでしょう。
以上の方法を組み合わせることで、子供の怖がりを克服することは可能です。
ただし、子供のペースを尊重すると同時に、根気強くサポートし続けることが大切です。
子供の恐怖心を否定せずにサポートする方法
私自身、子供の頃はお化けや暗闇が怖くて困っていました。
小学1年生から30歳を過ぎるまで、お化け恐怖症と暗闇恐怖症に苦しんでいたのです。
ですから、子供たちがお化けが怖いと困っている気持ちは、とてもよく理解できます。
お化け恐怖症は自分でなりたくてなったものではありませんし、消すこともできません。
そこに親が口出ししてしまうと、子供は自分が弱虫だとさらに思ってしまうでしょう。
私自身も、今でも親の言葉が心に突き刺さる当時のことを鮮明に覚えています。
子供に否定的な言葉をかけることは、自尊心を傷つけるだけであり、恐怖を克服するのには何の役にも立ちません。
恐怖心を克服するためには、時間をかけて少しずつ取り組む必要があります。
このアドバイスを聞いてがっかりする人もいるかもしれませんが、あせってしまうと逆効果です。
子供がお化けを怖がるのは普通のことですが、大人ではあまり見かけないのは、適切なサポートを受けているからです。
子供が恐怖を次第に減らしていくためには、親が恐怖を増大させるようなことを口にしないことが大切です。
また、子供が「なんとか我慢できた」「前よりも少しだけ向上した」と感じる瞬間を見つけ出し、すぐに褒めてあげることも重要です。
その経験を積み重ねていくことで、「暗闇でも大丈夫」という成功体験が恐怖心を上回り、次第に恐怖が薄れていくでしょう。